今回ディレクターズ・カット版を観ました(1/22)。
まず私はこういう絶望的な世界設定のSFが好きです。ディストピア映画、と言うのでしょうか。
例えば、時計じかけのオレンジとか。この後書く予定の華氏451も。
これから公開のカレ・ブランも楽しみです。
ほかにも、藤子・F・不二雄先生のブラックなSF漫画も良いですよね。
近未来が舞台の場合、現代の問題を拡大して描くケースが多いので、風刺満載で刺激的。
色々考えさせられます。
この映画を借りたのは、最近ソラリスという小説(二回映画化されてますが見てません)を読んで、そこの解説で原作者(スタニスワフ・レム)が、制作者の原作解釈に不満を持ち、
ソラリスの映画をひどく嫌っていた話を知ったことがきっかけです。
映像が別媒体(とくに小説)に原作を頼ることが多いのは、
脚本などを基に画を作るという性質上仕方がないのかもしれません。
しかし、頼ってばかりでは映画の創造性が見下げられてしまうのではないか?とも
考えることがあります。
そこで、何か映画(脚本)が原作のものを観たいと思った、というわけです。
ソラリスと同じく、これも近未来SFですし。
今回は主に制作面について勉強になったことを書きたいと思います。
(ルーカスとウォルター・マーチの音声解説、マーチのインタビューを参考に。)
ええと、特典映像がかなり充実しており(レンタルだけど)、普段音響について自分の意識が足りなかったということを自覚させられました。
エコーのこだわりや逆再生など、
近未来世界を構成するために音響が重要な役割を担っているのだと実感できます。
音響のWalter Murchが脚本にも参加しているので、初期から音と世界は一体化して作られていったのかもしれません(少なくともマーチにとっては)。
また、音は画作りよりも繊細で難しいもののようにも感じました。
私が見てから一週間くらい経っていますが、
LUHの「Never Mind」という声(加工されている声)が今でも脳内再生されます…
それくらい音声が印象的なので、夜静かな時に観るといいかもしれないです。
それにしても、
警官の声と懺悔をする場所で再生されている声が同じとは、皮肉っぽいですね…
ほかにも暗示や寓意がちりばめられています。それを考えたり知ったりするだけでも面白い!
刑務所のニクソンの演説、哲学者から取った名前…などなど。
テクノロジー自身であるホログラムはテクノロジーの使い方が分からない…などなど。
スター・ウォーズの魅力の一つは、作り込まれた設定と奥行きのある世界観だと思うのですが、
そのような創造性がこのTHXの世界にもあふれています。
(個人的メモ:トカゲの意味・トンネルを縦に・亜人種・キュービックなんとか(音響)・ゴダール・THXとLUHの由来・サルトル・ニーチェ・三幕構成)
今回感銘を受けたのは、
前半のシーンで文脈の掴めない映像が続くんですが、
それはわざとであり、未来世界では今の我々が理解できないような撮り方をするはずだ、ということです。
難しくて理解できないものを見せる、という選択。すごい。
映画は観客が観るものなので、分かりやすさは大切だと思います。
でも、こういう表現もあっていいですよね。
ただ難解というだけでなく、前半の映像は見ていてとても美しいです。
モニターのノイズや音波、青白い映像…芸術作品のようです。
テーマとなっている機械化・管理社会だけでなく、原子力、臓器移植などの問題もさりげなく示されています。
この作品は、二回見て細部の要素を関連づけないと、ただの恋愛逃亡モノに思われてしまうかもしれません。
好き嫌いは別れると思いますが、
私は、何回も観て、この世界を知っていきたい、そう思いました。
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