映画ブログのはずがゲームブログになりつつある。そんなブログ。

2013/03/26

22. ベニスに死す / Morte a Venezia (1971)


大学の授業で観ました(1/24)。英題はDeath in Veniceですね。
もう一度観てから書く予定だったのですが、いつもつい忘れて新しい映画を借りてきてしまうので、古い感想メモをまとめなおして更新したいと思います。それでは、小説との対比を中心に。


原作を読んでから観たので、まず思ったのは、小説のほうがストーカー度が高いです(友人も同意見でした)。 そして、主人公アッシェンバッハが恋するタッジオは本当に美少年でした(同上)。「恋する」と書いてしまいましたが、彼の気持ちを正確に表現するなら「愛する」が正しいですね。トーマス・マンの原作はドイツ語ですが、この映画は英語です。仕方のないことですが、私にはやっぱりドイツ語の響きのほうがこの物語に合うように思えました。


主人公アッシェンバッハの原作での外見上のモデルはマーラーなのですが(授業で聞いた)、 映画では彼の交響曲が使われており、アッシェンバッハの職業も作家から音楽家に変更されているので、さらにマーラーに人物像が重なるようになっています(本人にとっては迷惑な話かもしれませんね)。


小説では、ヴェニスへ向かうまでに出会う人々が、悪魔を連想させるようになっています。 映画ではその邪悪な感じが、旅行者に対して話しかける老人の汚さなどに、とても良く視覚化できているなと思いました。小説でのプラトン(『パイドロス』)に関する言及などは映画で表しようがないので再現できず残念なのですが、映画でもアッシェンバッハの思いと葛藤は十分に味わえますし、忍び寄るペストの脅威の様子は理解しやすいように感じました。


アッシェンバッハがタッジオを遠くから見ていることを示すために、遠くから望遠を効かせてタッジオを撮るなどの工夫が見られます。小説ではかなりアッシェンバッハの心理描写が多いので、これを映画にするのは難しいと思ったのですが、彼を演じるボガートの演技は素晴らしく、視線や表情、佇まいで全てを表現します。説明の言葉は要りませんでした。とくに終盤の小噴水の近くで彼を見つめながら倒れかかるシーンは圧巻ですね。元々、アッシェンバッハとタッジオはほとんど視線しか交わしません。この映画も同様沈黙を味わう作品だと思います。そしてその沈黙にはマーラーの美しい交響曲が添えられていました。

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